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【DIG BOOK 2021】 MOTO-BUNKAインタビュー

ライダーたちによるライダーのためのBMXメディア DIG BMX!その歴史は古く、なんと今年で30周年を迎えるとか。
その年の総集編として年号発行されているDIG BOOK。

2021年度版には、僭越ながらMOTO-BUNKAのインタビューも掲載していただきました。
30周年記念を祝してDIG BOOK 2021年度版一部の日本語訳バージョンをオンラインにて特別公開!

DIG BOOK2022年度版にはジャパン特集として東京拠点に活動する船生光の写真集8ページ分(見開き4ページ)が含まれており、日本国内のライダーが多数出演しております!

DIG BOOK取扱店様にて購入可能ですので、気になる方はお近くのBMXショップへGO!

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DIG BOOK 2021の白石大輔:MOTO-BUNKAのインタビュー和訳となります。

雑誌を作り始めたきっかけは?

そもそも雑誌を作るためにMOTO-BUNKAを始めたわけではなくて、日本のBMXシーンの情報をインスタグラムでシェアすることから始めました。ずっと同じことを繰り返しても面白くないので、情報発信の方法を色々と模索していたんですけど、2019年に音声コンテンツとしてMOTO文化放送と名付けたポッドキャストを始めてみたんです。

デバイスの進化や時代の流れを考えると、音声コンテンツはすごく良いものだと思っていて。一方で、僕は喋るのも得意じゃないし、最初は自分の声を聞くのもなんだか恥ずかしかったんですよね。Pegyがポッドキャストを一緒にやってくれることになって、第1回目を配信してみたんですけど、それが思いのほか沢山の人に聴いてもらえて、ありがたいことに毎回シェアされるようになりました。MacBookの内臓マイクで収録した音質の酷いものでしたけど(笑)リスナーも増えてきたので、ライダーの悩みに答えるQ&A企画なんかもやってみたり。リクエストを頂くようになった時に、リスナーが情報発信する場所も必要だと感じたんですよね。彼らの情報を集約するものとして雑誌を作ったのが始まりです。

なので、MOTO文化通信Vol.1の雑誌はすべてポッドキャストリスナーから送られてきた写真とテキストで構成されています。テーマは”ローカルプライド”、全国各地のライダーたちが発信するプライドが集まり、皆さんのおかげで素晴らしい作品が完成しました。

一つのものに仕上げるときのプロセス(やり方)は?

正直、そのプロセスにいつも悩まされています(笑)今まで編集の仕事をしていたわけではないですし、雑誌を作るのもフルレングスビデオ”CROSSOVER”を作ることもすべて初めてのことだったから手探りで進めています。1つのプロジェクトを終えると、次はこうした方が良いものを作れるなって気づかされています。

雑誌だとまずはテーマを決めて、どんなコンテンツで構成するか考えます。文章を作ったり、デザインは誰にお願いするか、どの写真を使うか、英語翻訳を誰にお願いするかとか。大枠を最初に決めて細かい作業を進めます。ざっくりとした流れで言うと、僕はアイディアや構成を考えて、Pegyが英語翻訳したり、2人で全体的なデザインを整えてクオリティを上げていく感じです。

わかる人にはわかると思うけど、本当に大変な作業だと思います。作品を作り続けている全ての人をリスペクトしています。

日本の近年の雑誌文化はどんな状況?

日本の近年のBMX雑誌で言うと、今はMOTO文化通信しかないと思います。だからこそ日本のライダーは興味を持ってくれていると思いますね。こんな情報を入れて欲しいとか、ライダーから自分も特集して欲しいとか言ってもらえるのもすごく嬉しいことだし、もちろん続けていきたい。自分たちももっと雑誌を広げていきたいんですよね。

インターネットが進化して、スマホアプリで編集して発行できるようなサービスも増えていきているし、写真の撮り方から雑誌の作り方まで全てGoogleで調べれる時代。もっと雑誌を作る動きが生まれて欲しいとも思っています。あえてスマホだけで制作を完結させる雑誌というのも面白いかも。作り手が増えることで読む人も増えていくと思いますし。

・CROSSOVERのDVDにブックレットをつけた理由は?

Crossoverの撮影はプロジェクトとして2015年に始まり、日本を初めアジア、アメリカ、ヨーロッパ、本当にたくさんの都市を訪れました。いつもフィルムカメラを持ち歩いていて、ツアーの様子を撮って写真に残していたんですよね。その時にフォトグラファーの方々とも出会って、彼らにもツアーの写真を撮ってもらっていました。日本では船生光がフォトグラファーとして精力的に動いていて、日本の写真もたくさんあるし、自分たちの旅の記録や彼らの作品を紙媒体として残しておきたかったのが理由の1つです。

もう1つの理由としては、DVDの構成と制作に協力してくれた人のクレジットやライダーのパーソナルデータをわかりやすくしたかったから。この作品がフィルマーだけではなく、グラフィック、デザイン、フォトグラファーやサウンドを作るトラックメーカーなど様々なアーティストが関わって作られていることも伝えたいんですよね。これを読んでCrossoverを持ってる人はクレジットやチャプターの詳細なども見直してみてください。協力してくれた全ての人に感謝しています。

もう少し雑誌のことを掘り下げるけど、モト文化ってなに、そしてなんで始めたの?

MOTO-BUNKAという名前の話からすると、自分の父親はMOTO-BUNKAというバイクショップを経営しています。MOTOはモーターサイクルから、BUNKAは日本語で文化という意味。父親はバイクを文化的に広めたいという気持ちからお店をスタートさせて、もう40年近くになりますけど、そのストーリーが好きだったし、同じようにBMXを広めたいと思っているからその名前を使わせてもらってます。BMXはBICYCLE MOTOCROSSの略ですし。父はバイク屋、お爺さんは競輪選手だったから生まれた時から2輪に囲まれていましたよ(笑)

実際のところMOTO-BUNKAは計画的に作られたものではなくて、僕自身が戦略的なタイプではないんですよね。今自分ができること、やりたいことをひたすら続けて自然と生まれた感じです。振り返ると、8年前に佃勇海(現STRANGER/PRIMOのプロライダー)に出会って、彼の映像を撮るために中古のカメラを買ってビデオを作り始めたのがきっかけになったんだと思います。それまでは全くカメラに興味もなかったんだけどね。当時はHORIEGUMIとしてHORIVIDEOシリーズを作り始めて、そうすると海外メディアも自分たちの映像を取り上げてくれるようになったんです。それから海外のライダーから連絡をもらうことが増えましたね。

6年前に地元の愛媛から東京に引っ越して、たくさんのライダーと知り合いましたし、それこそHORIVIDEOを見てから僕らに会いたいと海外から東京へ遊びに来てくれたライダーもいました。それから自分たちも積極的に海外に行くようになりましたね。いろんな都市に訪れてローカルライダーたちと一緒に乗り、現地のBMXシーンに触れてみる。そうすると、外側から日本を見ることが出来たんですよね。日本にも個性的なライダーや魅力的なライダーがたくさんいることに気が付いたんです。うまく言葉でまとめれないんですけど、日本には日本独自のBMXカルチャーがあるってことですね。当時は日本にBMXメディアはなかったし、インスタグラムで気になるライダーをフォローしてるだけだと情報の広がりにも限界があると思ったから、2019年の終わりに日本のBMXシーンの情報を発信するメディアとしてMOTO-BUNKAをスタートさせました。

今はインスタグラムやウェブサイトをハブにして、雑誌の発行、映像制作、ポッドキャスト配信などを平行していろんなことをやっています。CROSSOVERのプレミアの時は、映画館を貸し切って上映会を開催。アフターパーティーとして、楽曲を提供してくれたアーティストの皆さんをクラブに招待してCROSSOVER用に作った楽曲のライブもやってもらったり。チャクラ君に作ってもらったBMXラップ”DOGS ON THE CORNER”のライブはめちゃくちゃ盛り上がりましたね。DVDをリリースしてから子供たちが楽曲を口ずさんでくれていたのがすごく嬉しかった。今は全国のカラオケ店でも配信していますので、日本に来たときは是非歌ってみてほしい(笑)そういった今までにないイベントを開催して、新たな体験を作り出すことにもチャレンジしています。

次のプロジェクトについて何かあれば聞かせてよ。

つぎはMOTO文化展というのを考えています。世界中で集めたサインやステッカー、撮り溜めたDVテープ、割れたペダルなどBMXに関わるさまざまなモノを展示してCROSSOVERの軌跡をビジュアル化したいんですよね。そうすると、この作品をよりリアルに感じてもらえると思います。そのタイミングでCROSSOVERのブックもリリースする予定です。中身は楽しみにしておいて。

今まで作ってきたプロジェクトは何にインスパイアされてきたの?また、新しいものを作る時に何にインスパイアされる?

BMXライダーが作り出した全てのものに影響されていますね。

2008年くらいにBMXを乗り始めて、その時は田舎に住んでいたからライダーもいなければBMXショップもなかったんです。BMXのことはインターネットで情報をゲットしていましたね。だからBMX雑誌をよく見ていたわけではないんですけど、東京に引っ越してからBMX雑誌や写真集を買って見るようになりました。Rob DoleckiのMAINTAINとRicky AdamのDESTROYING EVERYTHINGにはとくに影響を受けましたね。

オリジナルトリックもそうですけど、新しいものを作り出すことは、本当に難しいと思います。最近は日本にしかない独特なカルチャーからインスパイアを受けることが多いのかもしれないですね。例えば、アニメとか漫画とか。
日本だからこそ出来ることは何なのか、これまで繋がった人たちと一緒に何ができるのか、常日頃からアイディアを考え続けています。

何にモチベーションをもらってる?

BMXのおかげでたくさんの人に出会うことが出来たし、素晴らしい体験をさせてもらっているからだと思います。僕にとっては、世界中を旅することも、一生付き合っていくであろう親友たちと出会えたのもBMXのおかげなんです。BMXは最高にクールで人生を豊にしてくれるものだよってことを伝えたい。それがプロジェクトを継続するモチベーションに繋がってます。

もう1つは、Pegyの存在ですね。僕のビジョンに共感してくれて、一緒になってその実現に向けて協力してくれています。BMXに対する想いと熱量が一緒なんです。思いつきで行動する僕とは違って、Pegyはいつも論理的で概念的な思考を持っているから、いろんな場面で彼に救われていますよ。サイトを手伝ってくれているKenzoをはじめ、James Cox、Reichan、AK、船生光、モト文化インターン、ここには書き切れないくらい沢山の人に協力してもらっていて、本当に感謝しています。

・インスタグラム などで日々垂れ流しにされ続けられるメディアを通して、ライディングを発信するという意味で雑誌に未来はあると思う?またなんでそう思う?

例えば自分の新しいトリックを見てもらうには、今だとインスタグラムが一番良いですよね。ライディングの最新情報を届けるという意味では、雑誌だとスピードが遅すぎるのかもしれません。インスタントに最新の情報を得る方法を知ってしまうと、人々は情報速度も求め始めると思うので、この先、ライブ配信でニュートリックの完成を見届ける瞬間も増えるかも?

ライディングにフォーカスするだけではなく、例えばだけど、ライダーのパーソナルな情報だったり、アートワークを雑誌に入れたり、インスタグラムで手に入る情報と、雑誌でしか手に入らない情報とをうまく棲み分ければ雑誌は残り続けると思います。今の10代など新しい世代のBMXライダーにとっては必要と感じてもらえる内容であることも大事だと思いますけど。

いろんな媒体を試して思ったのは、雑誌は唯一デバイスを必要としないものなんですよね。ウェブマガジンはスマホやPC、DVDはDVDデッキが必要だし、雑誌はそのものだけで情報を入手できますよね。本が衰退していく時代と言われていても、デバイスの変化には影響されないから残り続けると思いますよ。流行りの波はあると思うけど、電力やデバイスを必要としない媒体というのもメリットだと思います。