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「Planetary System」フリーコースターハブの最新構造を徹底解剖!

  • 投稿カテゴリー:BLOG / RODI
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先日、RODIに入荷したSKAPEGOAT × 90EASTのコラボハブも採用している「Planetary System(プラネタリー・システム)」を使用したフリーコースターハブがBMXブランド各社から徐々に発売し始めていますね。新しい構造な上、軽量なので壊れやすいのでは?遊びの調整は?など様々な疑問があると思います。

ということで、フリーコースターハブ使用歴15年の私、ペギーが最新のフリーコースターの構造である「Planetary System」に焦点を当て、従来タイプの構造も含めて両者のメリット、デメリットを洗いざらい徹底解剖しちゃいます!

SKAPEGOAT × 90EAST – Freecoaster Hub

1. 「Planetary System」とは?

昨年発売したBSDのRevolution Hubを機に「Planetary System」の構造が認知されたのは言うまでもありませんが、実はこのシステムの初期型を開発したのはイスラエルのFREE NIGHTというブランドです。初めてこの構造を採用したフリーコースターハブと言われているPlanetary Coaster Hubは数年前にFREE NIGHTから発売されています。おそらくブランド自体の認知度も低いため、結果OEMとしてBSDがこの構造を採用したRevolution Hubがきっかけとなり「Planetary System」が世間に知れ渡るようになったというわけですね。

FREE NIGHT – Planetary Coaster Hub

それでは、前置きはこれくらいにしておいて、本題に入ります。

2. どんなフリーコースターなの?

「Planetary System」はほぼカセットハブと変わらない構造な上、負担が掛からないようによく考えられた仕組みになっています。最大の特徴は遊びがほぼないところでしょうか。これは単に遊びがないという意味でなく、そもそも遊びという概念がこのフリーコースターにはありません。そう聞くとフリーコースターを使用した経験がある人は「そしたらフェイキー中に簡単に噛んじゃうんじゃ…?」と思われるかもしれませんが、断言します、フェイキー中に無駄な噛みは起こりません。

そして軽いところにも注目してもらいたいです。カセットハブとあまり変わらない重量、その上耐久性もあります。回転系のトリックやテールウィップなどは遠心力の関係で回転軸から一番遠いホイールの重量により、やり易さがものすごく変化します。従来タイプのフリーコースターに比べて約200g軽いのですが、ホイールを200gも軽量化するのは容易ではありません。「Planetary System」を採用したハブはフリーコースターを使用し、回転系やテールウィップなどといったトリックの負担を減らしたいライダーにもおすすめします。

3. 爪タイプとなるコグの構造

では早速、構造の説明をしていきたいのですが、文章で説明するのが非常に難しく、動画と写真を合わせながら一つ一つ解剖していきたいと思います。尚、今回は私自身が使用するSKAPEGOAT × 90EASTのRHD(右ドライブ)を使用して説明していきます。

最初に説明するのはコグ部分となります。
見た目はカセットハブと全く同じなのですが、爪部分はカセットハブとは反対に閉じる方向にバネが入っています。つまり漕ぎ出す時に爪が起き上がる仕組みとなります。また、「Planetary System」を使用したハブはラチェット音がほんの少しだけ鳴りますが、前進している時は爪が起き上がっている状態になるためです。実はここも重要なポイントなのですが、常時爪が起き上がっている状況を作ることにより、同じ爪タイプでも爪が常時仕舞い込まれているタイプのフリーコースターにあった漕ぎ出しの歯飛び現象がなくなります。音が小さいのは出来る限り爪を押さえ込んでいるバネの反発力を弱くし、各所に負担が掛からないように設計されているからです。

Planetary Systemのコグ

4. 漕げる仕組み

次は今回の主題である「Planetary System」の核となる部分ですが、本当に驚くほどシンプルです。

構造の一番の肝となるのはこの厚さ1cm程度のクラッチリングといわれる部品です。
重さなんとたったの13g!

非常に小さく軽量な部品ですが、これが「Planetary System」のコア部分となり、カセットハブと大きく違う唯一のポイントです。仕組みは下の画像のように一方が回転すると一方は逆回転する部品となります。

クラッチリングの動き

この逆回転している3つの羽部分(ポールクラッチ)がコグ側の爪を起き上がらせ、カセットハブのように漕げる仕組みになっています。

Planetary System内部の動き

ここまでは漕げる仕組みの説明となりそこまでややこしくないのですが、ここからはクラッチリングの動作、そしてなぜフリーコースターになるかを解説していきたいと思います。

5. 最新構造となるフリコの仕組み

まず、前述で登場したクラッチリングはハブのシェルに固定され組まれています。下の画像のようにクラッチリングの周りにある6箇所の凸凹がシェルにハマる形状になっています。

Planetary Systemのハブ内部

つまり、シェル(ホイール)が回転すると逆方向にポールクラッチ(羽が3枚ある部分)が回転するようになっています。言葉では少しわかり辛いと思うので、下の動画を見てもらえれば理解できると思います。

クラッチリングの動き

今回はRHD(右ドライブ)を使用しているのでホイールが反時計回り、つまりフェイキーしている状態の時はポールクラッチは爪を起こす方向と逆方向(時計回り)に回転します。これがフェイキー中に噛まない仕掛けの全貌となります。ただ理屈上はホイールより速い速度で踏み込むと、逆回転するポールクラッチの速度をコグが追い越す形で追いつくため噛むのですが、ホイール(ハブ)よりクランク(コグ)を早く回すのはほぼスピードがない状態でない限り不可能に近いです。実際に色々なスピードで試してみたのですが、歩行スピードくらいの速度でも噛ませるという意識で思いっきり踏み込まない限りは噛みません。

6. 細部まで徹底解剖!

これで大まかな「Planetary System」の仕組みの説明は終わるのですが、もっと詳しく知りたいと思っている人のためにクラッチリングを分解して内部構造を説明していきたいと思います。

本ブログの最後に「Planetary System」と従来タイプのフリーコースターのメリットとデメリットもご紹介しますので、そちらが気になる7項目まで読み飛ばしてください。

まずは下のクラッチリングの分解図からご覧ください。

Planetary System内部のクラッチリング分解図

中身は大きく分けて7つの部品で構成されています。⑦のクラッチギアはより細かく分解できるのですが、分解する意味もないので今回は一つの部品として考えます。

クラッチリングの構造で一番重要となるのは④のポールクラッチと⑦のクラッチギアとなります。
この2つが組み合わさり逆回転する仕組みを実現しているというわけです。

Planetary System内部のクラッチギア
クラッチギアの動き

このクラッチリングの仕組みは本当によく考えられていて、小さい上に細かいギアがあって一見壊れやすそうだな、と思うのですが、実はこのクラッチリングに掛かる負担は爪を持ち上げるわずかな力だけなんです。さらにギア駆動にしていることにより、摩耗する部分もほとんどありません。

考えれば考えるほど良く出来ている構造です。

7. メリットとデメリット

以上で「Planetary System」についての説明は全て終えましたが、続いて従来のフリーコースターの構造と比較したメリットとデメリットを個人的な視点で書きたいと思います。

まずは自分自身も慣れ親しんだ従来タイプのフリーコースターについて。最大のメリットはやはり遊びを調整してフェイキー中でも踏み込めるところでしょうか。そもそもフリーコースターハブを使用していながらフェイキー中に踏み込む乗り方をする人は少ないかも知れませんが、遊びを考慮してフェイキー中に踏み込むフルキャブなど、踏み込むフェイキートリックをすることが従来タイプのフリーコースターでは可能です。

従来タイプのフリーコースターハブの構造

最大のデメリットは重量、そして従来タイプの構造の核となるコーン部分(8の部分)です。
このコーン部分がシェル自体に押し込まれ摩擦による抵抗で噛み合い、漕ぐことを実現しています。一見、特にデメリットはなさそうですが、摩擦によって噛むので、当然摩耗します。使い込んでいるうちに噛まなくなる現象が起こるのは、このコーンとシェルが摩耗してしまうためです。爪によって噛むカセットハブや「Planetary System」などの構造は摩擦抵抗ではなく、噛み合うことで駆動するので摩耗がほぼありません。

SKAPEGOAT × 90EAST – Freecoaster Hub

次に「Planetary System」のメリットとデメリットとなります。

メリットは上記でも色々と挙げていますが、カセットハブ並の軽い重量、フェイキー中に噛まない、そして構造がシンプルなので故障の原因が少なくメンテナンスも簡単なところです。また、前進もしくは停止しているときは遊びがほぼないため、カセットハブと同様に、テールタップやマニュアル時に踏み込んでフロントを上げる動作が可能です。

デメリットですが、敢えて上げるとすればフェイキー中に踏み込めないところでしょうか。それくらいしかデメリットが見当たらないのが正直なところですが、ほとんどの人からしたら逆にメリットなのでは?

8. 最後に

シンプルですが難しい構造なのでご理解いただけたか少々不安ではありますが、「Planetary System」を採用しているフリーコースターハブは、フェイキー中に踏み込むことをしないライダーにとっては夢のハブと言っていいのではないでしょうか。個人的にはこれからのスタンダードとなるフリーコースターの構造になると感じています。

長々と「Planetary System」について説明してきましたが、ブログでは中々伝わり辛いかもしれませんね。

今回ご紹介した「Planetary System」を採用するSKAPEGOAT × 90EAST – Freecoaster Hubは輸入代理店となるRODIはもちろん、全国のプロBMXショップでも取り扱いをしているので、是非チェックしてみてください。ご質問などのお問い合わせもお気軽にどうぞ。

SKAPEGOAT × 90EAST – Freecoaster Hub

“SKAPEGOAT × 90EAST – Freecoaster Hub”

元Animal BikesのライダーでもありフィルマーでもあったBob Scerbo(ボブ・シャーボ)のプロジェクト「SKAPEGOAT」と元Animal BikesのライダーでもあるLino Gonzalez(リノ・ゴンザレズ)が牽引するクルー「90EAST」とのコラボフリーコースターです。

従来のフリーコースターにあった概念をひっくり返す最新のメカニズム「Planetary System」を採用した画期的なフリーコースターとなります。

-特徴-
・従来のフリーコースターに比べ30%軽量されています
・フリーコースター特有の漕ぎ出しに発生する「遊び」がほぼありません(カセットハブに近い感覚です)
・フェイキー中にクラッチ(噛む)が起こることがないため、前に漕いで空転させることもできます(リアホイールより速い回転速度で踏み込むとクラッチします)
・従来のフリーコースターに比べハブ軸への負担が少ないため、ベアリングのサイズダウンが可能となり、より軽量化されています
・強度を増すために14mmのクロモリシャフトを使用しています(非中空)
・Planetary System、非中空シャフト、シェルの素材に7075アルミを使用し、激しいストリートライディングにも耐えれるよう設計されたフリーコースターハブです

-スペック-
クラッチ: Planetary System
シェル: 7075 Alloy, 36ホール
アクセル: 14mm 4140 Heat Treated Chromoly with 6mm hex ends (非中空)
ナット: 4130 Heat Treated Chromoly
ドライブ: 9T
ドライブサイド: RHD / LHD
重量: 約548g(ハブガード含まず)

※ドライブサイド、ノンドライブサイドのプラスチックハブガード付属